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『ルーヴル - DNP ミュージアムラボ』第10回展

《赤像式萼形クラテル》、通称《アンタイオスのクラテル》  陶器画家エウフロニオスによる署名、陶工エウクシテオス作といわれる/アテナイ、紀元前515‐紀元前510年頃/粘土/高さ44.8 cm、直径 55 cm/チェルヴェーテリ(イタリア) 出土/カンパーナ・コレクション、1861年/古代ギリシア・エトルリア・ローマ美術部門/G103(Cp748)/パリ、ルーヴル美術館 © Photo DNP / Philippe Fuzeau「古代ギリシアの名作をめぐって ―― 人 神々 英雄」開催と第3期への展開について

ルーヴル美術館と大日本印刷株式会社(以下:DNP)は、新しい美術鑑賞を探求する共同プロジェクト「ルーヴル - DNP ミュージアムラボ」第2期の最終展示として、西洋文化・美術の礎のひとつである古代ギリシア美術に焦点をあてた第10回展を開催します。同展は、ルーヴル美術館が世界に誇る古代ギリシア陶器の傑作《アンタイオスのクラテル》をはじめ、4点の所蔵作品を展示するほか、DNPが独自に開発した多様な鑑賞システムによって、楽しみながら古代ギリシア美術のキーポイントを理解できる体験型の展覧会です。

なお、本展で開発した鑑賞システムのうち3点が、2014年6月、ミロのヴィーナスの展示室を含む、パリ・ルーヴル美術館の古代ギリシア・エトルリア・ローマ美術部門の3つの展示室に設置される予定です。

また、ルーヴル美術館とDNPは、第1期・第2期の約7年にわたって、映像やITを活用した新しい美術鑑賞方法を開発してきた同プロジェクトの活動が、美術作品とのより豊かな"出会い"に有効であると判断し、新たな方針でプロジェクトを継続することで合意しました。

■ 展示作品

展示作品の《アンタイオスのクラテル》は、ルーヴル美術館の代表作品のひとつで、古代ギリシア美術の質の高さを示すギリシア陶器の名品です。本作品に署名を残したエウフロニオスは、「赤像式」という陶器技法を駆使した、ギリシア陶器の最も革新的な作家の一人です。主要な面に描かれているのは、ギリシア神話で最も有名な英雄ヘラクレスが巨人アンタイオスを退治する冒険譚の一場面です。簡素で力強い空間構成や躍動的な人体表現など、エウフロニオスの芸術性や巧みさが冴える傑作と言われています。この極めて美しい壷は、古代ギリシア時代に「シュンポジオン」と呼ばれた宴会の中で、葡萄酒を水で希釈するために使われた実用品でもありました。

■第10回展の概要と主な鑑賞システム

観覧者は、まず会場入口に設置された映像地図で、古代ギリシアの地理的な広がりや、その芸術の変遷について概観することができます。その後、展示室に入って作品を鑑賞するとともに、作品《アンタイオスのクラテル》の前に設置された鑑賞システム【アンタイオスのクラテル、ギリシア陶器の傑作】によって、同作品の鑑賞の要点や、ギリシア美術・文明の主要な特徴を学ぶことができます。こうしたギリシア美術・文明に関するキーポイントは、会場各所に設置された他の鑑賞システムからも学ぶことができます。また、他の3点の展示作品にも同様の特徴をみることができます。例えば、《休息するヘラクレス》には"人体表現"の規範が見られ、《赤像式の杯》に描かれた神々や英雄は"ギリシアの神々の識別"というテーマに沿っており、《ディオニュソスの仮面》に表された葡萄酒の神ディオニュソス信仰に結びつく"シュンポジオン"の儀式では、人々と神々の密接な関係性が表われています。

● 鑑賞システム【古代ギリシア世界】

古代ギリシア世界は千年を超える歴史をもち、現代のギリシアをはるかに越える広い地域に広がり、その影響下で芸術が大きく発展、革新をとげてきました。鑑賞システム【古代ギリシア世界】では、ルーヴル美術館所蔵の名品とともに古代ギリシア世界の変遷を概観できます。このシステムは、古代ギリシア美術鑑賞に必要な基礎知識の紹介を目的とし、パリのルーヴル美術館展示室に設置される予定です。

● 鑑賞システム【ギリシアの神々や英雄を見分ける】

古代ギリシア人は多神教で、さまざまな儀式や祭典を執り行い、多くの神々や英雄を祀りました。この神々や英雄たちは、それぞれにまつわる物語や、役割を示す象徴(アトリビュート)、装身具、衣服や身体の特徴によって見分けることができます。《アンタイオスのクラテル》にも、ヘラクレスを表すライオンの毛皮や棍棒などのアトリビュートが描きこまれ、何の物語かを明示しています。この鑑賞システムでは、アフロディーテやアポロンなど、おなじみの神々の識別の方法を学ぶことができます。本システムは、ルーヴル美術館のミロのヴィーナスのギャラリーに設置される予定で、年間600万人におよぶ来館者に対応して、作品画像をタッチするだけで解説情報にアクセスできるようにするなど、操作のしやすさに配慮しています。

● 鑑賞システム【シュンポジオンへようこそ】

宴会「シュンポジオン」は単なる社交の場にとどまらず、社会的・宗教的にも重要な役割を担うものでした。宴の際には、葡萄酒と演劇の神であるディオニュソスの像に見守られる中、人々は寝台に身を横たえ、葡萄酒を酌み交わしながら音楽、詩、舞踏、遊戯を嗜み、政治や哲学を語ったと言われ、その様子は多くの陶器に生き生きと描かれています。本システムでは、陶器画に描かれた人々によって繰り広げられる、賑やかな音楽の流れるシュンポジオンの様子を、フロントプロジェクションスクリーンを3面連結した映像で体験できます。

● 鑑賞システム【男性の裸像 完璧を求めて】

古代ギリシアにおいて人物像は、芸術家が好んで選んだテーマで、解剖学、均衡、プロポーションに関する絶え間ない研究が行われていました。本展では、《アンタイオスのクラテル》、《赤像式の杯》における絵画での人体表現と、古代ギリシアを代表する彫刻家リュシッポス原作の《休息するヘラクレス》における彫刻での人体表現を紹介します。リュシッポスは、均衡に基づく美の規範を打ち立てた、人体表現の歴史に欠かすことのできない芸術家で、今回はリュシッポスの原作に基づいて作られた希少なブロンズ製の模刻を展示します。また、鑑賞システム【男性の裸像 完璧を求めて】では、観覧者は、自らがとるポーズをリアルタイムに反映するCG(コンピュータグラフィックス)と、ギリシアの各時代を代表する彫刻作品の画像を比較しながら、古代ギリシアの人体表現の推移を理解することができます。

■「ルーヴル - DNP ミュージアムラボ」の第3期への展開について

ルーヴル ‐ DNP ミュージアムラボは、美術館の来館者と美術作品とをつなぐアプローチ手法の革新を目的として、2006年10月に活動を開始しました。活動の中心となる東京・五反田の体験スペースでは、ルーヴル美術館の所蔵作品を各回1点~数点展示するとともに、映像やITを活用した鑑賞システムを通じて、美術作品と鑑賞者の"出会い"を豊かに広げるユニークな展覧会を開催しています。

2010年10月に開始した第2期の活動では、同ミュージアムラボで運用したシステムを順次パリのルーヴル美術館に導入しています。これまでに、第7回展と第8回展で開発した4種の鑑賞システムがルーヴル美術館内に設置され、稼動しています。さらに2013年6月には第9回展で開発した2種の鑑賞システムが絵画部門に設置される予定です。

第10回展をもって第2期の満了を迎えるにあたり、ルーヴル美術館とDNPは、第1期、第2期の取り組みを通じ、映像やITを活用した新しい美術鑑賞が作品とのより豊かな出会いに有効であるとの確証を得たことから、プロジェクト第3期を推進することで合意しました。第3期は、第2期で実践してきた学校の美術の授業を対象としたデジタル技術を活かした鑑賞ワークショップの取り組みを発展させ、五反田での展覧会と連動させながら、美術館という場所にとどまらない、人と美術の新しい関係性を提案するべく活動の幅を広げていきます。第3期は、2014年から3年間の予定で推進します。

■開催概要 「古代ギリシアの名作をめぐって ―― 人 神々 英雄」

主催

ルーヴル美術館、大日本印刷

協力

日本航空

学術担当

ソフィー・マルモア [ルーヴル美術館研究員]

会場

ルーヴル ‐ DNP ミュージアムラボ(東京都品川区西五反田3-5-20 DNP五反田ビル1F)

会期

2013年2月1日(金)~9月1日(日)

開館時間

金:18:00~21:00、土・日:10:00~18:00

休館日

金曜日が祝日の場合、保守点検日、展示替え期間、年末年始

申込・問い合わせ

観覧には予約が必要です(観覧は無料)

[ウェブサイト] http://museumlab.jp

[お電話] ルーヴル ‐ DNP ミュージアムラボ カスタマーセンター(03-5435-0880)

[受付時間]月~木 11:00~17:00/金 11:00~21:00/土・日 9:00~18:00(月~金の祝日、年末年始は休み)

www.dnp.co.jp

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